「人付き合いがしんどい」
「ひとりでいることが多くて、周りから変だといわれる」
「静かなところが好き」
そのように感じる方々は、一人でそっとしてほしいだけなのに、うるさい人たちに巻き込まれては傷つき、「世の中はとても生きづらい」と感じながら生活しています。
中には、神経症やコミュニケーション障害、発達障害などではないかと、真剣に悩んでいる方もいらっしゃるようです。
そんな方にはぜひ、「HSP」である可能性を疑ってみてほしいと思います。
HSPとは
HSP(Highly Sensitive Person)とは、「過度に敏感な人」と訳される、エレイン・N・アーロン博士が提唱した、人間のタイプの名前です。
HSPは、他の人と比べて、五感を通じて入ってくる情報に対して敏感に反応するあまり、多くの情報を吸収してしまいます。
人類の15~20%、つまり5人に1人はHSPだといわれています。
HSPは病気などではなく、遺伝によりもたらされた性質の一種なのです。
HSPの性格は多くの場合、内向的だったり引っ込み思案だとされます。
自己テスト
以下の質問に、少しでも当てはまれば「はい」、あまり当てはまらない、まったく当てはまらないなら「いいえ」と答えてください。
自分をとりまく環境の微妙な変化によくきづくほうだ
他人の気分に左右される
痛みにとても敏感である
忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
カフェインに敏感に反応する
明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい
豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
騒音に悩まされやすい
美術や音楽に深く心動かされる
とても良心的である
すぐにびっくりする(仰天する)
短時間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう
人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)
一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
ミスをしたり、物をわすれたりしないようにいつも気をつける
暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が高ぶる
空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
生活に変化があると混乱する
デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた
出典:『ささいなことにもすぐ「動揺」してしまうあなたへ。』エレイン・N・アーロン
以上の質問のうち、12個以上に「はい」と答えた方は、HSPである可能性が高いといえます。
今の社会は、外交的な性格がよしとされ、高いコミュニケーション力を要求されます。そんな中で内向的なHSPの方々は、生きづらいと感じていると思います。
ましてや現在は、SNSなどで「自分から発信する時代」。中には、「発信しない人間は、存在しないも同然」とまで言われます。
外へ向けて一生懸命に発信をしていても、本来は内向きな性格のせいでどんどんしんどくなる方が増えています。
私もHSPの気質のために、散々つらい思いをしてきました。何度もうつ状態にもなりました。そんな思いをする人が一人でも少なくなればと、自身の経験や役に立った考え方を提供していきたいとサイトを立ち上げました。
「自分らしく生きられない」「生き方がわからない」など、つらい思いをしているHSPの方々にとって、気持ちが軽くなるヒントを提供できればと思っています。
うつ病がきっかけ
自己テストをやってみて、自分もHSPじゃないか、と思われた方は「周りにわかってもらえない」「自分は変なのでは?」と、今まで思ってきたのではないでしょうか?
私もそうでした。「敏感すぎる」、「外部からの刺激が苦痛」、「メンタルが弱い」、「物静かで内向的」。そんな自分は、社会に必要とされるアクティブな人材像からかけ離れていることに苦しんできました。
なぜ私が自分がHSPだと自覚したのか、そしてHSPであると分かった後に起きた変化がどのようなものだったか。
私は以前、職場の異動でうつ病になりました。
うつ病なんて弱い人間の甘えだ、なんて思っていたので、自分がそのような状態に陥ったことが信じられませんでした。
うつ病を経験する前までは、「どんなことでも努力すれば必ず成し遂げられる」と信じていました。「そのための努力と、能力を高めるために心身を鍛えなければ」と常に自分を追いこむクセがありました。
でも、なんでも努力したからといってうまくいくとは限りません。
学生であれば、勉強を一人でがんばれば結果が出ます。しかし、社会人となれば仕事は一人で完結しないで、他人との連携で進められます。他人を動かそうと思っても、努力だけでなんとかなるものではありません。
人間関係の悩みが解決できず、そんな自分を卑下するようになって、深刻なうつ病になってしまったのでした。
今では幸運なことに、うつ病からは回復しています。
それ以来「強くあるべき」「賢くあるべき」という理想を脇において、自分を低く評価しないよう気を付けています。
そして、自分の内面を見つめ直して、「そもそも、私ってどういう生き方をすればいいの?」ということを考え始めるようになりました。
そんなに時、よく見ていたプレゼンテーション動画「TED」で、スーザン・ケインの「内向的な人が秘めている力」という動画を発見したのです。その動画に感動し、「内向的」というキーワードで自分自身を考えることにしました。
この動画から、内向的な自分を恥じないこと、内向的な自分が社会に必要とされていることを教えてもらいました。
その後、内向的な自分がどのように生きるべきか、さらに調べているうちに、アーロン博士の提唱するHSPを知るようになりました。
ただ最初はHSPについて、違和感が付きまとっていました。HSPを説明する際の「敏感」「繊細」という単語に、何だか弱々しい人のイメージがあり、最初はあまり深く調べることはしませんでした。
しかし、実際にアーロン博士の著書を詳しく読むと、雷に打たれたような衝撃が走りました。
「これは自分のことについて書いてある、自分の説明書だ」
HSPでのとらえなおし
自分の説明書だと思ったのは、アーロン博士の著書『ささいなことにもすぐ「動揺」してしまうあなたへ。』という本です。
この本は私に3つの視点を授けてくれました。
ひとつめは、敏感なHSPの特性は、生まれ持ったものであることです。例えていうと、「性格」などではなく、むしろ「体質」といえるものだといえます。
「性格」は後から自分の意志で変えることができますが、「体質」はそう簡単には変えられません。身長の高低や肌の色と同じように、HSPであることは先天的なもので、自分の意志とは無関係に与えられた宿命なのです。
ふたつめは、最初に違和感を感じていた「敏感」や「繊細」についてです。「敏感」「繊細」という言葉を言い換えると、「知覚(センサー)の感度が鋭いため、情報を余計に多く拾い上げる」ということです。
普通の人が気づかずスルーしてしまう細かなことを、大きく広げられた感度の良いアンテナで大量に拾い上げてしまう。拾い上げた多くの情報を処理するため頭脳はフル稼働で働き、神経が高ぶってしまい、すぐにクタクタになってしまう。
私はまさにそのような人間なので、言い当てられてびっくりしました。
3つめが、「私は孤独ではない」ということ。すなわち自分のように「敏感」でセンサー感度が高い人間が、世の中に一定数いるということが分かったのです。
それにより、他のHSPと有益な情報を共有して、お互いに助け合えるかもしれないという希望が芽生えました。
しかし同時に、自分がHSPであると知らずに苦しんでいる方々も多いはずです。一人でも多くのHSPに、自分を知る機会を得てほしいと願っています。
私自身、このHSPという「型」を得たことで、自分自身の見方が180度変わりました。
大きく変わったのは、自分を許せるようになったことです。これは本当に救いでした。「自分が弱くて、怠慢で努力をしてこなたったせいで、こんなことになってしまったんだ。」そんなふうに、自分を責める気持ちがずっと心の底にあったのです。
自分が弱いのではなく、生まれ持った感覚の鋭さのため、押し寄せる情報の波に圧倒され、脳の処理能力を超えてしまっていただけなんだと、過去の自分を冷静にとらえなおすことができました。
自分を責めていた罪悪感から解放され、以前より前向きになることができました。
しかしここで、新たな課題も生まれます。それはHSPを疲弊させる「情報」や「刺激」とは何かという疑問です。また、それとどう付き合っていくのか、次回説明したいと思います。
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