HSPの居場所―「一燈照隅」という生き方(HSP⑧)

誰と対話すべきか

前回は、「稼げる一芸」を手に入れるには、限界を突破するため「心の声」を聞き、苦にならない、好きなものを選ぶべきと述べました。

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すでに「心の声」に従って、好きな分野に注力できている人は、本当に幸せだと思います。しかし、ほとんどの人が好きでもない仕事を、我慢しながらこなしているのが現状です。

特にHSPの方々は、不快な刺激ばかりの中を、不平ひとつ言わず黙々と仕事をこなしておられると察します。

しんどいけど、今の現状で満足だ、とおっしゃるHSPの人もおられるでしょう。それでも私は、「心の声」に従って、「稼げる一芸」を構築していく必要があると思っています。

ただ、人それぞれ、好きなものや得意なものは異なります。ですので、どのような道を行けばよいか、何が適職なのかなど、個別具体的に示しようがありません。

しかし、HSPに限れば、ひとつだけ言えることがあります。

それは、人間に関わるよりも、「モノ」や「データ」などに関わる、技術的な仕事を選ぶべきだということです。

「モノ」や「データ」は、人間と違って文句や不平不満は言いません。また、自分のスキルの良し悪しが、出来上がりに正直に反映されますので、客観的に改善点が分かります。

ぜひそういった職種に身を置き、職場を利用して「稼げる一芸」を身につけてください。そのレベルに行かなくても、「モノ」や「データ」を扱う仕事なら、他の仕事に比べてストレスも格段に少ないと思います。

例を挙げると、

「モノ」を作るしごとならば、製造業の現場や職人、農業や畜産、建設に関わる設計、商品開発。また、審美眼が必要な芸術分野もHSPの得意分野なので、モノに関わるデザインや色彩、写真やCGなどのグラフィックなど。

「モノ」を扱う仕事ならば、特殊なものを扱う専門店。ただし、来客に対して売り込まなくてよいことと、深い商品知識が必要とされること。例えば、専門業者や職人向け商品の販売店や図書館の司書などはその代表でしょう。

または、重機の操作などオペレーティング業務、機械や設備の保守管理なども「モノ」を扱いう職種といえます。肉体労働にもかかわらずHSPの比率が高いなと、私の経験から思ったのは、大型トラックや特殊な重機の操作などを専門的にする方々です。一般の人が敬遠する、「技能の修練」を必要とする仕事でした。

「データ」を作る仕事ならば、調査や研究など、専門知識を必要とされ他人との競争にならない分野。ソフトウェアの開発やプログラミングも同様で、現在は人材不足のようです。

「データ」を扱う仕事ならば、財務データを扱う会計関係、保険や金融にかかわるアナリスト、マーケティングや統計の分析、専門分野のコンサルティングなどが挙げられます。

以上の「モノ」や「データ」を軸にした仕事を選んだ上で、もうひとつ、組織のなかで生きていく作法を身につける必要があります。それは、、、

出世してはいけない

タイトルを見て「えっ?」と思われるでしょう。唐突に、いったい何を言い出すかと思われた方も多いはず。

そうです、組織に身を置いているHSPは、出世してはいけないのです。

生活しなければならないので、ある程度のポジションまでは上がる必要はあります。しかし、それ以上出世してはいけない、というラインが存在します。それは、「現場から離れるかどうか」の一点です。

HSPの特性から「稼げる一芸」は、「モノ」や「データ」に関する技術的スキルに立脚します。

かたや、現場から離れてマネジメントのみを行うマネージャーや管理職は、扱う対象が「人間」となります。

人間から発せられる刺激を敏感に受けとってしまうHSPにとって、マネジメントはとても酷なものになるでしょう。マネージャーとなれば部下に対して、組織を代表して冷徹な言葉を伝える必要があります。

普通の人なら、なんでもなくこなせる仕事でも、HSPの方々には自分の言葉、相手の反応など、すべてが心に刺さっていきます。

普通の人ならば、心に刺さって傷がついても、時間とともに治ります。そしてそれを繰り返すことで、心の皮が分厚くなって、傷すらつかなくなります。まさに「面の皮が厚くなる」のです。

「人間」を相手する仕事でも例外的に許容できるのは、「専門的」な事で人と関わる仕事です。例としては、専門的な知識や技能を教える教師や講師、専門的観点から助言するアドバイザーなどが挙げられます。

何度も申し上げますが、HSPの敏感さは「生まれ」もったもので、急に慣れるものではありません。心が傷だらけになってしまう前に、出世レースから降りて、技術を持った「現場のリーダー」を目指しましょう。

大きな組織を動かすのではなく、影響力は小さくても自分の守備範囲はきっちり固める。まさに「一燈照隅」という生き方を実践すべきなのです。

部屋の隅だけを照らすほどの小さな明かり。でもここだけは、どこよりも明るく照らすつもりで…。

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