うつは「RPG」みたいに考えれば軽くなる

近年、過酷な環境で働き、「うつ」になってしまい、苦しむ人が増えています。

うつは「こころの風邪」などといわれ、一般にも認知されて特別な病気ではなくなりました。

しかしそれは、うつになって苦しんでいる人が、以前より多くなっている証拠でもあります。かく言う私も、うつが原因で休職を経験しました。

うつを克服するのは簡単ではなく、長い時間が必要となってきます。医師の処方に従って薬を飲んだり、仕事を控えたりもしなければならないでしょう。

その他にどうすれば改善するのか、いろんな情報を見てもよくわからない方が多いのではないでしょうか。この記事では、私自身の体験から導いた改善法を紹介したいと思います。

その改善法とは「RPGの視点」を加える、という方法です。

RPGとは「ロールプレイングゲーム」のことで、ドラクエやファイナルファンタジーなどに代表されるゲームの一種です。

RPGの中では、旅の中で敵を倒してレベルを上げ、さらに強い敵に挑んでいきます。

多くのRPGでは、体力をHP(ヒットポイント)、攻撃したり回復したりする魔法に必要なMP(マジックポイント)といったものがあります。

RPGの視点とは、それに似たしくみが自分の体にもあるということです。そして、それらを回復させるものも、RPGに例えようとするものです。

つまり、HP(ヒットポイント)が「体力」に、MP(マジックポイント)が「精神の力」に相当するものだとみなすのです。

ゲームのRPGでは、これらを回復するためには2つの方法があります。それを現実に当てはめて説明したいと思います。

回復方法:その1

RPGの中で、HPやMPを回復させるものは何か。

まずひとつめは「宿屋」です。宿に泊まると疲労が全快して、また旅を続けることができます。実際のうつ克服にも、体力を回復させるために「宿屋」に該当するものが必要なのです。

「宿屋」とは何か、これはそのものズバリ「休息」です。休息といっても人それぞれですが、私はそれを「睡眠」とイコールだとみなしています。

私がうつになったとき、毎日2時間程度しか眠れませんでした。睡眠不足は体力の回復を妨げて、疲れが取れなくなります。でもそれ以上に問題なのは、脳への影響が甚大だということです。

睡眠時間が短いと、意識がはっきりしないのでミスを連発します。そのせいで落ち込み、精神が不安定になってますます眠れなくなります。

なぜそこまで睡眠が脳に影響を及ぼすのか。それは起きているとき以上に、脳が睡眠時に大切な働きをしているからです。

寝ている時の脳のはたらき

人間の脳は眠っているとき、活動を完全に停止していると思いがちです。しかし実際は停止しておらず、むしろ活発に活動しているのです。

何をしているのかというと、起きている時に集めた情報を、「覚えておくべき情報」と「覚えなくていい情報」とに選別しています。

私たちが起きている間に見る、聞く、感じるものの情報量はあまりに膨大です。そのすべてを、すべて覚えていてはキリがありません。脳は、生存に必要なものは記憶に留め、いらないと判断したものは捨てるという整理作業を、情報が入ってこない睡眠時に行っているのです。

睡眠時間が十分であれば、必要なことは覚え、不必要なことは忘れる、という正常な働きをしてくれます。しかし、何らかの原因で睡眠時間が取れないと、その働きが十分果たせないために「覚えられない」「記憶力が低下」などの問題を引き起こします。

私がうつ症状のまま、睡眠時間をほとんど取らずに仕事をしていた時のことです。普通なら覚えているべき事柄を、全く覚えていないことがよくありました。普段であれば忘れていても、もう一度言われれば思い出すでしょう。

でもその時は、思い出すことができないほどすっぽりと記憶が「消えている」のです。そのことで自分を責めて、ストレスを増大させる原因のひとつにもなりました。

睡眠不足が引き起こす恐ろしい症状

脳に「情報の選別をする時間」を与えないことで生まれる弊害が、もう一つあります。それは「忘れられない」ことです。

特に嫌なことが忘れられないのです。人から言われたこと、自分の失言や失敗など、頭にこびりついて離れません。寝ようとするとそれらが頭の中をめぐって寝付けず、さらなる睡眠不足の原因となりました。

よく眠れているときは、ストレスの元になる嫌な記憶を、寝ている間に脳がより分けて消そうとしてくれます。「嫌なことがあったけど一晩寝たらスッキリ」という体験をした方も多いでしょう。

睡眠時間が不足すると、より分けをする時間も無くなり「忘れる」ための機能も低下してしまうのです。

このように、「覚えられないのに忘れられない」という一見矛盾しているようにみえる状況に陥ってしまします。こころの回復には、睡眠は絶対不可決だと身をもって断言します。

回復方法:その2

次は、もうひとつの回復方法についてです。

それは、RPGで旅の途中に、体力などを回復させるために持ち歩く「アイテム」です。ここでは体力を回復させる「宿屋」にたいして、こころにあたるMPを回復させるものと考えてください。

この「アイテム」にあたるもとは、いったい何なのでしょうか。それは、残念ながらゲームのように決まっておらず、簡単にお店で買えるものではないのです。

つまり「アイテム」は、これと決まったものはないとしか答えられないのです。

「ふざけるな!」と怒られそうですが、なぜなら私の思う「アイテム」とは、人それぞれ違うものだから特定できないのです。どういうことかというと、

「アイテム」とは人それぞれ違う、その人が「好きなもの」

なのです。「好きなもの」がスポーツや趣味、旅行の場合もありますし、家族やペットと過ごす時間かもしれません。何かするのではなく、ただ自然の中でぼーっとする人もいるでしょう。

好きなことをしてると充実感を得られ、同時にその瞬間は嫌なことが忘れられるというメリットがあります。しかし、好きなことをするためには活動するためのエネルギーが必要です。

布団から出られないような本格的なうつ状態では、そのような活動はできません。「宿屋」で十分な休息=睡眠をとり、動けるようになったらぜひ「好きなこと」をしてほしいと思います。

好きなことをしていていいのか

好きなことをすべきだ、と申しましたが、あなたがもし病気の療養のために会社を休職しているなら、「会社に申し訳なくてそんなことできない」と思われるかもしれません。

しかも、そんな趣味に興じていることが会社に知られたら、非難されて立場までが危うくなると心配されることでしょう。もちろん、会社にばれるほど、大っぴらに遊びまわるのは控えるべきでしょう。でも可能な限り「好きなこと」をするべきだ、というのが私の持論です。

休職している間に遊ぶなんてと、まじめな皆さんは後ろめたさを感じることでしょう。でも安心してください。会社があなたに期待していることは「再び戦力になれるように回復すること」なのです。よって、今のあなたの仕事は「回復すること」なのです。

そもそも、会社があなたをクビにしないで休ませている時点で、会社はあなたを「今後活躍してもらう人材」だと認定しているようなものです。

会社や組織への貢献は、回復してからすればいいのです。人から遊んでいると思われることでも、気にしないでください。それは当人にとっては、回復への大切なプロセスなので、回復のため思う存分「好きなこと」をしてください。

それでも、今いる職場が「ムリだ」と思えば、勇気をもって逃げ出してもいいのです。

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私の場合

好きなことをしろと急に言われても、大半の人が困るのではないでしょうか。「何をしていいかわからない」とおっしゃる方が以外に多い印象です。ですので、僭越ながら私の場合を紹介したいと思います。

私の趣味は読書で、静かな図書館が大好きです。

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しかし、うつの症状の時は本がまるで読めませんでした。活字が全然頭に入ってきません。まるでディスレクシア(難読症)のようでした。

じゃあ映像なら大丈夫だろう、とテレビの放送をみていましたがこれがとても苦痛でした。特にバラエティ番組が見ていられないのです。

普通なら観ていて「面白い」「びっくり」などの感情が起こるものですが、そんな感情が全く生まれず、観ていても味気ないのです。

それ以上に、驚いたり楽しそうな芸能人と、なんの感情も生まれない自分とのギャップに耐えられなくなりました。そのギャップが世間とのギャップのようで、すごく情けなくなった思いでした。

やることがなく、ただボーっとして過ごす日が続きました。ただそのおかげで活動する体力(HP)は回復したようです。そんな時、学生時代によく映画を観ていたことを思い出しました。

そこでレンタル店や図書館で、観たかった日本映画のDVDを借りまくることにしたのです。洋画と違って日本映画は字幕を読む必要がないので、セリフがすんなりと頭に入ってきます。

特にたくさん観たのが、黒澤明の作品でした。観た作品の感想は割愛しますが、そこに登場するキャラクターの生きざまに「こんなふうに生きてみろ」と背中を押されたような思いがしました。

私の「アイテム」=「好きなこと」は「黒澤映画」でした。運よくMPを回復してくれるものに巡り合えて、本当にラッキーでした。

最後に

現在、うつから回復したいと思ってらっしゃる方には、まず十分すぎるほどの睡眠をとってもらいたいのです。何をするにしてもHPの回復が第一となります。

その後「好きなこと」を見つけて、徐々にMPを回復してほしいと願っています。自分の好きなことがすぐに分からなくても、過去の自分と向き合うことで発見の糸口になることがあります。

「好きなこと」は自分の資質に関わることでもあります。それが分かれば将来的に自分の「生き方」や「稼ぐための手段」に変わる可能性もあるのです。

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この記事がうつを克服しようとする方々へのエールとなれば、これ以上の喜びはありません。

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コメント

  1. まさはる より:

    見ていただければ幸いです。
    まさはるといいます。49歳おじさんです。
    最近HSPというものを知りました。
    今までウツ病?でも無い感じだし。。なんだろうと思い続けていました。
    非常に良いブログで仲間がいる感じで嬉しくなりました。

    見たらお返事頂けるとありがたいです。

    • ウェスタ氏 より:

      まさはるさん

      書き込んでいただいて、ありがとうございます。

      私もHSPを知るまでは、他人と違う自分が異常なのかと悩み続けていました。

      しかし少なからず似たタイプの人々がいることで安心感を覚え、逆にそれを強みに変えようと自信が湧いてきました。

      まさはるさんと非常に似た感覚の持ち主は、意外に近くにいたりするものです。

      周りの人のしぐさ等をよく見ていると、自分と共通したものを発見できたりします。

      そんな人と知り合えれば、分かり合える友人が増えて、HSPであることへの安心感が増します。

      このブログが、まさはるさんの世界を広げるきっかけになれば、私にとってもこれ以上嬉しいことはありません。