前回は、「何を」言うかではなく、「誰が」言うかによって影響力が変わるので、相手にとって「重要なポジション」にいることが必要だ、という「あり方」について説明しました。
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今までの記事がだいぶ回りくどいものでしたが、ようやく実践編です。最終回の今回はもう一つの「振る舞い方」について、3ステップに分けて解説します。
この「振る舞い方」とは、相手の「重要なポジション」に自分を置くためのものです。これらを実践してうまくいけば、相手への影響力は格段に向上できます。
しかし、前にも書いたように相手を「思い通りに動かそう」などと考えてはいけません。また、相手に好かれたい、よく思われたいという願望も持たないでください。
あくまで、「自分のあり方を自分で決めているだけ」というスタンスを貫いてほしいのです。つまり、努力すべきは「自分をコントロールすること」だけで、相手の中での「重要なポジション」になるかは相手に任せましょう。
第1ステップ
最初のステップは、「相手の話をひたすら聞く」ということです。
ただ相手の話に付き合って、聞き流していてはいけません。相手にしっかりと聞いていると伝わるような姿勢が必要です。いわゆる「傾聴」をしてください。
相手にとって存在感のある人物になろうとする場合、この「話を聞く」という行為は、最も重要なものとなります。
人は、自分の話を聞いてくれる人に、自然と好意を持つ動物です。そして、話を聞いてくれる人とはコミュニケーションの時間が長くなり、親近感が増すことにつながります。
しかし、相手の話を聞こうと思っても、話す機会が少ないと意味がありません。とにかく話すチャンスをたくさん作らなければなりません。
第2ステップ
相手と話すチャンスをどうやって作るのか。相手が話してくれるためのきっかけを、こちらで用意するのです。
それは「問い」。質問です。
当たり前すぎて怒られそうですが、これが結構むずかしい。最初は何を聞けばいいのか、まるで見当がつきません。当たり障りのないことを聞いても仕方ないし、あまりにプライベートなことを最初から突っ込んで聞くのも失礼になります。
そもそも、その人のすべてを聞き出すことなど不可能ですし、時間の浪費になってしまいます。ここは、相手の「重要なポジション」に入るためにどうするか、という視点で「問い」を絞り込まなければなりません。
そこで、「問い」を絞り込んでフォーカスするのは相手の「大切にしている世界」にしてほしいと思います。「大切にしている世界」とは相手が、大好きで寝る間を惜しんででもやりたいことを指します。
それは「~するのが好き」「~を見るのが好き」「~を集めるのが好き」など具体的に説明ができるもの以外に、「困っている人を助けたい」「人々を正しい道に導きたい」「研究して新しい発見をしたい」など、趣味の枠にとどまらない「生き方」や「ライフワーク」といったものまで含まれます。
相手にとって何が「大切にしている」ことか、見極めるのは難しいと思います。ただ、間違いなく言えることは、好きなことには多くの時間を費やしている、という傾向があります。
「大切にしている世界」は何なのか知るためには、その人の行動や言動を普段から観察しておく必要があります。その上で「問い」を作っては投げかけて、たくさん話してもらう。
相手の「大切にしている世界」が判明すれば、お互いのコミュニケーション頻度は格段にアップします。あとは最後のステップで仕上げです。
第3ステップ
相手の「大切にしている世界」が分かれば、最後にするべきことがあります。
それは「共有」です。
共有するとは、簡単に言えば相手の「大切な世界」を自分も同じように大好きだ、と思わせることです。
でも本当に好きかどうか、それは問題にしません。相手にそう思わせれたらいいだけなので、好きになるよりは、詳しくなったり、同じ時間をすごしたりすることで十分です。
自分の好きなもの、かけがえのないものを同じように大切にしてくれる人は、「同志」のような、絆で結ばれた本当の仲間にもなれます。
こんな地位まで行ければ大したものですが、なかなかそう簡単にはいかないでしょう。普通に付き合いをする対人関係で、そんなレベルを目指すのは現実的ではありません。
同志までいかないが、大切なものを共有してくれる大事なひと、私はこれを「理解者」と呼んでいます。
理解者とは、自分や自分のやっていることを否定せずに、近くで見守ってくれていると感じられる人のことをいいます。そしてこの理解者は本人にとって「重要なポジション」に間違いありません。
「いつも応援してくれる、あの人のために頑張ろう」と思ってもらえる「理解者」になれば、相手への影響力はとても大きなものになります。
ここまでくれば、相手はこちらの要望をすぐ聞き入れてくれますし、何をしてほしいか相手から聞いてくれることさえあります。
このような、ストレスフリーの対人関係を目指して、ぜひ3ステップを実践してみてください。
さいごのまとめ
全4回にわたって、対人コミュニケーションについて、私がいつも考えていることや実際行っていることを書いてみました。
読まれた方それぞれに考え方があり、異論もあることと思います。
ただ、ここで私が言いたかったのは「他人を動かすなんてことは簡単にいかないんだから、もっと気楽にいこうよ」というメッセージです。「諦め」などという言葉を使っているのも、そんな理由からです。
そして他人を動かそうとするムリな挑戦をし続けて、多くの人が疲れきってしまっています。無駄なことに労力を費やしてもしかたないのです。ですので「自分をコントロールする」という、労力のベクトルを自分自身へ向けることをお勧めしました。
一連の記事を読んで、ちょっとでも「諦め」てくれて、肩の荷が下りて楽になってもらえれることを願っています。